Q03

提供: みんなのデジタル教科書教育研究会

 「デジタル教科書」100のQ&A
みんなのデジタル教科書教育研究会片山敏郎


Q01  デジタル教科書ってなんですか?
今の教科書は、紙でできていますね。
「デジタル教科書」は、例えば「電子書籍端末のようなデバイスの中に全教科の教科書が入って
いるもの」と考えると分かりやすいでしょう。
それは、子どもたちが一人一台ずつもって使用することが想定されています。
画像や、音声、動画など、マルチメディア資料を豊富にいれることで、紙の教科書よりも、より
理解しやすくなることが期待されているのです。


Q02  教師用と子供用があるのですか?
文部科学省の分け方では、「指導者用デジタル教科書」と「学習者用デジタル教科書」に分けら
れています。
「指導者用デジタル教科書」は、すでに販売されています。ただ、それは、「指導書」として販
売されており、公的には「教科書」とは認められていません。教科書をFlashや動画を用
いて、動かしたり、書きこんだり、参考動画を見たりすることができ、電子黒板に投影して使用
します。
ここで、議論にしたい「デジタル教科書」は、子ども一人一人に配布されるデバイスに入った教
科書のことで、文部科学省の言う「学習者用デジタル教科書」のことです。


Q03  なぜ最近急に話題になったのですか?
2009年11月、当時の原口総務大臣が、原口ビジョンとして「一人一台のデジタル教科書の
導入」に言及し、期待が高まったからです。さらに、技術の進歩によって、iPadを始めとした
スレート型PCや電子書籍端末が急激に普及してきたことも一因であると思われます。


Q05  フューチャースクールってなんですか?
2010年に総務省で始めた、デジタル教科書の実証研究を行う事業です。東西合わせて10校
のモデル校で、一人一台のタブレットPCをもたせ、デジタル教科書の可能性を探っています。2
009年11月の事業仕分けの再仕分けで、「廃止」の判定を受け、マスコミにも取り上げられ
るなど話題となりました。


Q06  「フューチャースクール」は、どうして仕分けされてしまったのですか?
前回の仕分け(第二弾)において「ICT利活用型教育の確立支援事業」に対して廃止という結論が
出ており,その時の注文として「将来ビジョンを提示せよ」「文科省を主導とせよ」と提示され
たにもかかわらず,今回の仕分け時にもこれらの項目に対する改善が見られなかったという理由
です。
マスコミには「ゾンビ事業」として取り上げられ、盛田政務官が、「事業仕分けを辞めるべき」
と発言した映像が多く取り上げられました。
総務省としては、
・文科省のみの「教育の情報化」では,導入の規模や技術力として不十分.
・文科省のみの「教育の情報化」では,社会の情報化のスピードに対して不十分.
という認識を持っているようです。
文科省との協調をはかる時間を取らずに,再度総務省主導のプロジェクトとしてなぜ提示したか
という経緯を,現状の学校教育が抱える問題とつなげて考える必要があると思います。


Q07  DiTTってなんですか?
デジタル教科書教材協議会の略称です。「全ての小中学生がデジタル教科書・教材を持つ環境を
整える」「その実現を図るためのコンソーシアムを形成し、課題整理、政策提言、ハード・ソフ
ト開発、実証実験、普及啓発を進める」の2つを目標と掲げています。2010年11月18日現在107の
企業が所属しています。
会長は、元東京大学総長の小宮山宏氏。副会長は、立命館大学教育開発推進機構教授の陰山英男氏
東京学芸大学客員教授の藤原和博氏、慶應義塾大学メディアデザイン研究科教授の中村 伊知哉氏が務めています。
学校や、研究者というよりも、企業が中心になっています。
詳しくは、以下のHPを参照してください。
デジタル教科書教材協議会
http://ditt.jp/


Q08  文部科学省はどう考えているのですか?
「教育の情報化ビジョン」の中で、2020年をめどに研究が始められてはいます。
ただ、環境をどう整備するか,ということに関して積極的に文科省自らがコミットするような動
きは,目立って見えていません。まず先に「これこれこういう教育をしたいから,こういう環境
が必要だ」という流れのスタンスを取っていると言えるでしょう.これは最近平成22年10月
29日に出た「教育の情報化に関する手引
」(www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/1259413.htm)にも出ており,
 ・教科指導でどう活用するか
 ・情報活用能力をどう育てるか
 ・校務の情報科をどうするか
 ・教員の資質をどうするか
という章を経てから
 ・学校のICT環境整備をどうするか
という流れになっています.


Q09  外国ではどうしているんですか?
韓国では2011年から、デジタル教科書の利用が義務化されます。
アメリカは様々ですが、2011年からデジタル教科書へ全面移項する高校も出てきました。
current.ndl.go.jp/node/16309
一方、カリフォルニア州は財政難のために、教育費が削り、その方法として、
(e-learningと呼ばれる)デジタル教科書の利用しています。
他に、ポルトガルでは年齢に応じた3種類のPCと50以上の教育コンテンツを提供する
「マゼランプロジェクト」が始まり、約100万人の小中学生(小学校90%、中学校40%)にPCを
配布しました
resemom.jp/article/2010/10/20/12.html
イギリスでは英国政府が、ホーム・アクセス・プログラム (Home Access Programme) と呼ばれる
インターネット・アクセス支援プログラムを2008年9月から始めています。
すべての子どもたちが、自宅からインターネットにアクセスし、教育機会が提供されることが目
的です。
www.microsoft.com/japan/athome/magazine/.../default.aspx#case01


Q10  教科書会社はどう思っているのですか?
これまでも、光村図書などから、「指導者用のデジタル教科書」は発行されていましたが、
2012年度からの小学校教科書に準拠した「指導者用デジタル教科書」が28種類作られるそう
です。
www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20100601-OYT8T00325.htm
ただし、指導用デジタル教科書は生徒用教科書と違い、使用義務がありません。
金額も、学校ライセンスで各学年・教科ごとに数万円する場合が殆どで、予算面で通らないこと
も多いようです。
主に、電子黒板で使うために開発され、実際に利用が始まっています。


Q11  紙の教科書はなくなるんですか?
文部科学省では、紙の教科書との併用もあるとされています。
また、デジタル教科書を推進している人の多くは、紙の重要性も主張しています。
ですから、科目によって紙が使われたり、資料集のみデジタル化する、などの形である程度併用
されるでしょう。
また、小学1,2年は紙の教科書だけを使う、といった案を複数の人が唱えています。
長期的に見れば無くす方向とみる人と、無くさず併用という意見で分かれています。無くして、
その財源をデバイスに充てるべきという意見もあります。


Q12  学校の先生はどう考えているのですか?
授業におけるICT活用が始まったばかりであり、デジタル教材の活用が進みつつある段階です

デジタル教科書についてのニュースを、新聞やインターネットなどを使って積極的に集めている
一部の先生を除くと、
そもそもデジタル教科書について考える機会のない先生が多いでしょう。多くの人は、議論の存
在にすら気が付いていません。議論を知っている人も、まだまだ先の話と思い問題にしていない
人が殆どです。


Q13  デジタル教科書のメリットは何ですか?
第一に、どんなところで生徒がつまずきやすいか、などの知識の蓄積がしやすく、また多数の学
校での共有が可能です。それは、ある先生が作成した「生徒の理解を助ける教材」の蓄積、共有
も含みます。
第二に、生徒一人一人が一台ずつ持って自分の勉強の進度・成果を蓄積すれば、それに合わせた

一人一人のための、一人一人にあった学習プログラムを容易に作ることが出来る可能性を持って
います。
これによって、反復が重要な計算の習熟や漢字などの学習は、効率的に確実に行うことが可能と
なります。
第三に、紙の教科書ではできない「分かりやすい説明」そのものが可能になることです。
動画や音声での説明、立体的な映像で資料を生徒が見られます。さらに、それらを生徒が「操作
できる」
ことも分かりやすさを助けます。
たとえば、立体的な図形の映像を、生徒が好きなように回して観察すること、
地図上で自分の見たい部分を拡大・縮小したり、細かい説明を調べられる、などです。
第四に、コンピューターがたくさん浸透した現代において、それを使いこなす能力が自然と身に
つくことです。
デジタル教科書を使うことによって、コンピューターが操作できることは、子供たちにとって「
誰でも出来る自然なこと」となります。子どもたちが主体的に情報を集め、加工し、発信しやす
くなることで情報モラルや、情報活用の実践力が身に付きます。
この他にも、児童相互の学び合いをより豊かにし、コミュニケーティブな学習ができることや、
メディアリテラシーが身に付くことなど、様々な可能性が指摘されています。


Q14  デジタル教科書のデメリットは何ですか?
第一に、デジタル教科書でないとできないことが多い一方、紙の教科書だからこその良さがあり
ます。
ある有名な実験で、ある文章をパソコンの画面で読む(文章中に、より詳しいリンクが付いて
いる)、
紙で読むの2通りで試したところ、紙で学ぶ方が内容に集中しやすく、学習効果が高いという結
果が出ています。
第二に、すべての「学習」にとって必要である、書くことの減少、考える時間の減少につながる
恐れがあることです。
デジタル教科書は多数の情報を一つにまとめられ、検索で瞬時に情報を表示できます。
そのため、ある課題に答えを出すために、自分の手や頭を使わなくなる子供が増える恐れがあり
ます。
これは、長期的な視点で見ると「検索できない内容に対して、自分の手と頭を使って答えが出す
ことができない」
という大きなデメリットを含んでいます。
第三に、健康面の懸念がまだ払拭されていないこと。
第四に、現場の教師が新しい環境に適合することに時間がかかることが懸念されています。


Q15  いつ頃までに導入するのですか?
当初、2015年までに、全小・中学校へ導入、を原口総務大臣が目指しましたが、その後の議論を
見ると、2020年頃が目処ではないかと言われています。DiTTでは2015年を目標に掲
げています。2020年ごろ,次期指導要領改訂とリンクし、2030年ごろ,現在の技術的課題の多く
がクリアされると見る向きもあります。しかし、海外の情勢を勘案すると、2020年には完全
導入にこぎ着けたいところです。


Q16  財源はどうするんですか?
教科書としての位置づけであれば無償ですが、端末については、リースという案もあります。そ
の際、子ども手当の一部をリース代に回すという孫正義氏の提案がある一方、国費を使用せずに
普及させられる仕組みを作る必要があるという指摘もあります。一台2万円とすると、6年間で
ほぼ紙の教科書の倍のコストが必要です。
デジタル教科書の導入によって日本社会が活性化してイノベーションの種が遍在化する時代が到
来すれば,財源問題も緩和するかもしれないという楽観的な見方もありますが、こればかりはな
んとも言えません。


Q17  壊れたらどうするんですか?
修理か購入となります。現行の教科書と同じです。その間は、学校の予備機を使います。その後
,個人保証制度を利用して新機種と有償交換します。データは教室のバックアップと自分の外部
メモリチップなどから復元します。現在の教科書制度とかわらないでしょう。


Q18  全部でいくらかかるのですか?
デバイス費用は1台19,800円を目指します。個人負担とするか、子ども手当とするか、他の方法
をとるかは未定です。
デジタル教科書コンテンツとデジタル基本辞書・資料は「義務教育諸学校の教科用図書の無償に
関する法律および
義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」によって無償で提供されます。
その他必要に応じて有料や無料のデジタル教材を使います。これらは、副教材の扱いで、保護者
から集める「教材費」として支出します。
ネットワーク接続を前提とした場合、家庭におけるネットワーク回線費用は各家庭等の負担にな
ります。
したがって,光の道構想に相当するものが実現している必要があります。
導入当初は、ネットワークに接続しない場合も想定する必要があるかもしれません。
支援員の人件費は、自治体負担とします。そのため、特別な支援員はほとんど必要が無く、自治
体が契約した保守業者で対応できる程度の安定したシステムを構築しなければなりません。


Q19  健康面の問題は無いのですか?
韓国では2年ほどの調査の結果、問題はないとして導入に踏み切りました。
www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20100601-OYT8T00325.htm
電磁波による問題については、携帯電話の電磁波による影響が健康にどう影響するか、と同じ問
題です。
ただし、携帯電話の回線を使ってインターネットにつなぐのでなければ、影響は携帯電話より小
さいだろうと推測できます。また、ディスプレイの光が、生徒の視力に影響しないかという問
題は、まだ明確な検証結果が出ておらず、懸念材料です。ディスプレイが、どのようなものが採
用されるかによっても変わってくるものと思います。


Q20  経済効果はあるのですか?
あります。機械を作る会社、販売する会社、学校へインターネット回線を引く会社には、大きな
ビジネスチャンスです。
また、教材の形が変わることにより、新たな教材会社が参入するビジネスチャンスもあります。
直接的にはデジタル教科書制作会社と周辺のデジタルコンテンツ制作会社がうるおうかもしれま
せん。
一方,教科書流通業者はたいへん困ったことになります。
長期的かつ間接的には,デジタル教科書が国民標準端末の基礎となるため,行政の電子化や医療
福祉の電子化や
流通消費産業の電子化が促進されて,日本国内の産業コストが低減し,イノベーションが誘導さ

るのではないかと思います。その意味では日本の産業活性化のキーになる政策に位置づけられ
ます。


Q21  技術的な課題はなんですか?
いくつかあります。
第一に、「いろいろな種類の機械で、同じような再生・操作が可能になり、操作しやすく、作成
者も作成しやすい」
デジタル教科書・教材の形式をどうするか、です。学校や教師がデジタル教科書を選ぶ際、いく
つかの種類から機械を選ぶことになるでしょう。そのとき、選ぶ機械によって使える教材が異
なる、これまで使っていた教材が使えなくなる、などが起こると大きな問題です。
第二に、デジタル教科書をインターネット回線につなぐとしたとき、一つの教室で同時につなぐ
ほどの回線が日本全国のすべての学校に導入することができるか、という点は大きな課題です。
第三に、消費電力が小さく動画も再生できるカラー画面の開発は一つの課題です。カラー電子イ
ンクの改良による省電力化と動画対応が望まれます。
第四に、画面をタッチしたりして操作する「タッチパネル」の機能の向上です。
たとえば画面を拡大・縮小したい、デジタル教科書内に簡単なメモを取りたい、といった操作の
時に機械がもたつくようでは、子供にとって勉強の妨げになります。
さらに将来的には、次のような技術的な発展も期待されます。
(1)ノートと同様の感覚を実現する手描きペン入力
(2)手描き入力文字や数式をテキスト化する機能
(3)音声入力をテキスト化する機能
(4)カメラによる映像パターンの認識機能
(5)高度な翻訳機能と,音声合成発音機能
Q22  どうしてデジタルじゃなきゃダメなんですか?紙じゃダメなんですか?
デジタルでないとできないことが、多数あるからです。
「Q13 メリットは何ですか?」の解答にそれらの多くが書かれています。
また、デジタル教科書の導入は「すべてを紙からデジタルにする」ことではありません。紙との
共存です。
数十年前までは世界のほとんどはアナログな物でしたが、今では、多くの人々が仕事でも家庭
でも、デジタルな物を日常的に用いています。
今後は、デジタルな物とアナログな物がお互いの良さを補い合って共存する社会になるでしょう

社会に出て行くための準備である学校も、やはり、デジタルとアナログの共存でないといけま
せん。
一方で、紙でもよしにして、都道府県別に別の制度をそれぞれ採択できるようにして競争してみ
るという提案もあります。


Q23  著作権はクリアできるのですか?
内容については、従来のように著作権処理が必要だと思われます。
ただ、もともと「教育現場での利用」においては、著作権による制限は大幅に緩くなっています

それに加え、作成者が自分の著作権を「誰でも使ってよい」や「○○の条件で自由に使ってよい」
などの指定を行う仕組みを、作る動きが始まっています。
ただ、すべてはクリアできないので,可能なら著作権法を抜本的に改正できると一番良いです。
デジタル教科書にのるコンテンツはそもそも全国民がアクセスするコンテンツですから,国民の
利益のためには
著作権フリーであるべきでしょう。


Q24  インターネットにつながるのですか?
賛否両論あります。
そもそも、ネットにつなげることにより、学習の方法がぐっと広がることは多くの人で共通した
見解です。
しかし、ネットにつなぐためには、学校にネット環境を整備する問題(工事費用の問題・技術的
問題)や
セキュリティの問題、電磁波はどうか(無線でつなぐ場合)など、クリアすべき問題が多数あり
ます。
それでも課題を解決してネットは接続すべきという意見もいれば、ネット接続は脇に置いておき
導入を早くするという人もいます。


Q25  インターネットにつながらない地域の子はどうするんですか?
できる限りつながるような基幹ネットワークの整備が必要です。
また、光の道構想が進めば、ほぼすべての地域でつながることとなります。
「光の道」でなくてもよいのでそれ相当のもので、できる限りがつながる努力を早急にすべき
です。
大都市偏重の過疎地差別が起きないように気を付けていかなければなりません。
一方で、インターネット無しでも学習可能な仕様も準備すべきと思われます。
動画を含めて、基本的なコンテンツは、オフラインでも仕様ができるようにしておかなくてはな
りません。


Q26  先生方は使いこなせるのですか?
子どもが使える物であれば、さすがに使えます。
教師のリテラシーが低いと思われがちですが、ICTの活用は今ではかなり日常化されており、
殆どの教師はそれほど低くないリテラシーを身に付けています。
ただ、管理面で、フリーズが起きたときのメンテナンスなどの対応はできない場合が多いと考え
られます。従って、そのような事態ができるだけ起きない安定した環境が構築される必要があり
ます。


Q27  もっと先にやるべきことがあるんじゃないですか?
たくさんありますが,いつまでたっても先にやるべきことが解決していないというのは,それが
暗礁に乗り上げているとmoも言えます。イノベーションにより、先にやるべきことも新しい突破
口が開けて解決の糸口が見つかる場合もあると考えます。
いずれにしても、学校が存在する第一の目的は「生徒が勉強すること」です。ですから、勉強内
容のさらなる向上のための手立ては、最も優先度の高い部類に入ると思います。


Q28  同じ費用でどんなことができますか?
これについては、税金からの持ち出しがいくらになるかで変わってきます。基幹ネットワーク整
備とデバイスの費用が、現行の教科書無償配布制度での費用より、増える部分となります。
例えば、教職員の定数を増やして、30人以下学級を実現する。
校舎の耐震工事を全小学校で完了するなどが考えられますが、いずれにしても、今後、試算を
して、比較してみる必要があります。


Q29  テキストの形式は何ですか?
PDFの他e Pub、XMDF、.book等多くのフォーマット候補があります。また、Flash Playerを使用
して1ページずつ作りこんでいる教科書メーカーもあります。ePubは電子書籍でも標準の規格
になってきているので、それが中心になるというのがいいのかもしれません。また、特別な支援
を必要とする子への対応から、DAISY(デジタル録音図書の国際標準規格)に対応するなどア
クセシビリティーにも配慮したものである必要があります。


Q30  データはどうやって取り込むんですか?
3通りくらいの方法が考えられています。
まず、インターネット回線につないでいる場合、インターネット回線から直接取り込む方法があ
ります。
第2に、学校に設置されるであろうサーバーと、LAN等の方法でつないで取り込む方法です。
第3は、USBメモリ、SDカードなどから取り込む方法です。
それぞれの方法について、何を取り込むのか、どれくらいの頻度で取り込むか、セキュリティ対
策を取りやすいか、などによって長所・短所があります。


Q31  カメラ機能は付けるんですか?
賛否両論あります。
たとえば、理科の実験の様子を撮影したり、社会の資料を撮影したり、などにおいて、カメラ機
能があると授業の幅が広がるという声は現場から上がっています。
一方、盗撮など、セキュリティー上の観点から不必要だという声もあります。
折衷案として、小型カメラを外部から付けて使えるようにしておき必要に応じて利用するとか、
撮影制限機能を付けるといった案もあります。


Q32  転売されませんか?
転売されないような特殊なセキュリティー機能が必要です。


Q33  何年生から使うんですか?
想定は小・中学生全員ですが、小学校3年生から、4年生から、5年生からという意見もあり
ます。
これについても、根拠のしっかりとした議論はまだできていないのが正直なところです。


Q34  一度買ったら何年使うんですか?
ハードウェアの寿命から小中の9年は持たないため4〜5年での切り替えが必要になるはずです。小
学校高学年時、中学校入学時、で切り替えなど意見が分かれています。
また、小456中123の6年間を1台ですませ、高校進学の際に買い換えるという意見もあり
ます。
デバイス自身は普通に市販されているようにし、大学生でも一般の人も購入することができるよ
うにします。


Q35  導入してうまくいかなかったらどうするんですか?
そうならないための研究・検証が事前に必要となります。
また、大きな変革ですので、色々と問題が起こる可能性は考えられます。
事前に最大限の準備をしておき、うまくいかないときは、即時対応できるようなサポート体制
を取っておくことが重要です。
分野は違いますが、最近の事例だと、地上デジタルテレビの導入や、裁判員制度の導入の際の対
応が、参考になりそうです。


Q36  OSなどのアップデートはどうやってやるんですか?
これは、Q30の問題に関わることです。
どのように新しいOSのデータを取り込むかによってアップデートのやり方が変わるためです。
いずれにしても、アップデート自体は極めて簡単な操作でできるように設計される必要があり
ます。
自宅でネットワークにつなげるだけでアップデートされる仕組みの構築が必要です。
もしアップデートが失敗しても、学校へ持って行けば対応がすぐにできるような体制を整えるこ
とが必要です。


Q37  フリーズなどのエラーが起きて授業が止まることは考えられませんか?
教科書として配られるものには、この問題が起きないように設計されている、という点が厳重に
検証されることになるでしょう。
ただし、学校の先生が作ったオリジナル教材については、作った先生の責任の下でフリーズなど
が起きないよう設計されることになります。
最悪の場合、ハード的にすべてを初期状態に戻す機能等が必要と考えられます。また、バックア
ップ端末の準備も必要になると思います。


Q38  支援員は必要ありませんか?
できる限り、必要でなくてもできるシステムを構築すべきです。
現在大手企業はITを円滑に稼動させる為の組織を持っているケースが多いですが、学校単独ではそ
のような仕組みを構築することは現実的ではありません。
教育委員会単位で、ある程度の支援体制を構築することは必要と思われますが、小さな自治体
では、うまくいかないことも考えられます。そのようなことから、支援員に頼らなくても教員の
スキルで対応できるようなインターフェースやシステムにする必要があります。


Q39  支援員の人件費も考えていますか?
予算化される必要はありますが、Q38で述べたように、原則としては、できる限り最小限にすべ
きと考えます。
各校一人ずつのようになると、膨大な予算が必要となり現実的ではありません。


Q40  学校に予備はおいておきますか?
授業途中での故障や修理が必要な場合も考えられ、予備機との交換がありえます。ですので、ク
ラスに1台づつ予備機を配備します。足りなかったら他のクラスから借りてきます。
中身のデータは、定期的にバックアップされている個人のデータを用いることになります。


Q41  情報教育担当者が大変すぎませんか?
日々の授業で使われるものであり、どうしても業務は増加します。しかし、すでに、かなりの過
剰負担がかかっていますので、メンテナンス専門の企業がサポートするなどの工夫が一層必要
です。これまで以上のサポート体制と業務に見合った待遇が必要となります。


Q42  学校現場からの反発が起きませんか?
授業改善に必要なものであり、使用に際して不安感をのぞく体制作りが必要だと思われます。
そのためには、適切な情報発信と、現場の意見を取り入れた検討委員会の開設など様々な工夫が
必要です。
また、教員の研修の仕組みについても検討する必要があります。


Q43  先生方の研修はどの程度必要ですか?
まず、現時点においては、「指導者用デジタル教科書」を使った授業に関する研修などが考えら
れます。
さらに、教員養成段階から十分な教育を実施する必要があります。
その上で、導入に際しては、子どもに与える前の年には教師への配布を完了し、それを使って授
業をする準備期間が必要であると思います。
各都道府県や市町村の教育センターでの伝達講習なども、大切になってくると思います。


Q44  先生方の議論が盛り上がっていないと聞きますが、なぜですか?
まだ、デジタル教科書についての情報が少なく、イメージしにくいこともあるからだと思われ
ます。
また、一方で現在の指導法を変えるというのは教師にとって非常に大きな負担だからです。これ
を慣性の法則とよび自然界の最も基本的な法則の一つです。運動の状態を変えるためには力が必
要です。力の効果は力の大きさとそれを加える時間の積に比例しますから,A:トップダウンで
行う,B:ボトムアップでゆっくりと変革していく,の2つの戦略があると思います。
いずれにせよ、必要で、導入が本決定となれば、議論もわき上がってくるでしょう。


Q45  産業界が盛り上がっているのはなぜですか?
小中学校で1000万人、大学まで入れて1500万人の市場が今後構築される為注目していることは事
実です。
しかし、企業にも将来の日本の為に教育を真剣に論じている方々がいることも事実です。


Q46  研究者の考えはどうなっているのですか?
賛成・反対の立場から、さまざまな意見が出されています。
指導者用デジタル教科書については、すでに論文等も発表されております。
学習者用デジタル教科書については、韓国での事例などが研究対象となっておりますが、日本で
はまだ、現実的な動きが始まったばかりなので、今後、活発に研究されていくことと思われます


Q47  子どもたち自身はどう感じているのですか?
まだ、研究・検証が始まったところであり、その中で子どもたちの使用感想が出てくると思われ
ます。
あるアンケートでは、「持ち物が少なくなる」「授業が分かりやすくなる」という期待感がある
一方、「忘れたときに全教科を忘れるので困る。」「目が悪くなるのでは無いか」などと懸念す
る声も聞かれました。
いずれにしても、子どもたちが、安心して、喜んで使えるものに仕上げる必要があります。


Q48  ノートや鉛筆もなくなるんですか?
書くことで覚えることも重要です。端末にノート機能も付くはずですが、ノートと鉛筆がなくな
ることはないでしょう。紙媒体との併用も考えられます。


Q49  充電はどうするんですか?
家に持ち帰り充電してくることが子供の約束になります。が、学校に充電の能力を構築すること
も重要になります。非接触充電機能付きの机なども検討されています。
また、カラー電子ペーパーが実現すれば,週一回程度の充電になります。


Q50  家に持ち帰ることができるのですか?
家庭学習で使うことも想定されています。
韓国の実験では、デバイスは学校に置いておき、家のPCからコンテンツに接続するというやり
方を取っていました。
デバイスを持ち歩くかどうかは、今後の検討材料でしょうが、いずれにしても、家庭でもアクセ
スできる必要はあります。


Q51  重さは重くはないのですか?
まだiPadなどの端末は重いため、これから軽量化が望まれます。
子供が持てる重さに(最低でも500g以下)にする必要があります。


Q52  親の負担はないのですか?
教科書としての位置づけであれば無償ですが、端末については、リースであれば有償となります
。もし負担できない場合は公費による補助や支援の制度を導入し,電子教科書が持てない子ども
は無くす必要があります。


Q53  ウイルス対策はどうするのですか?
Windowsではないので,ウイルスは現在のケータイやiOSデバイスがウイルスに感染しない程度に
は安全です。
状況によっては対策ソフトを内蔵することとなりますが、ネットワーク上の工夫で感染しないよ
うに対策することも重要です。


Q54  子どもがゲームをやりませんか?
LANへの接続制限や、使用時のルール決めなどが考えられます。


Q55  コミュニケーション力が無くなりませんか?
授業は先生と子どもたちで行われるものであり、教科書のデジタル化により変わるものではあり
ません。
むしろ、電子機器を使用してコミュニケーション能力を高めることが目的のひとつです。電子教
科書は道具の一つなので使用する側の意識が重要です。コンテンツ等も、コミュニケーションし
やすいものを用意していくことが考えられます。


Q56  先生はいらなくなりませんか?
従来の教科書を拡張するものであり、先生方が授業のねらいに沿って進めていきます。これから
も先生が重要であることは代わりません。


Q57  実現の可能性はどれくらいあるのですか?
長期のスパンで見れば、歴史の必然で100%であると言っても過言ではないでしょう。
しかし、これから5年、10年、という短いスパンで考えると、まだ決定とは言えないのが正直
なところです。
研究・検証を経て、予算化などの可能性が探られていくと思われます。


Q58  古くなったら買い換えはどうするのですか?
リースであれば、定期的に交換ということが考えられます。
コンテンツ面については、クラウドベースに移行しますので,古くならないように更新されます

デバイスが破損した場合には買い替えていただく必要があります。


Q59  引きこもりを助長しませんか?
引きこもりの原因がデジタルデバイスであるということは証明されていません。
一人で学習するコンテンツもありますが、基本的に学校における授業で活用するものであり、よ
りわかりやすい授業を展開できることで子どもたちによい影響を与えていくように設計されてい
ます。
そのため、引きこもりを助長することはないと考えています。


Q60  これからのスケジュールはどうなっているのですか?
数年間の検証実験も行われていますが、内容・進め方については、これから論議されていくと思
われます。
2015年にすべての児童生徒に提供するとなると、これから1〜2年でかなりの方向性が示されて
くると思います。


Q61  デコってもいいんですか?
デコるというのは、デコレーションする。つまり、飾るということですね。
多少シールを貼ったりペイントしたりすることは自由でしょうし、節度ある遊び心は良いと思い
ます。
筆箱と同じような扱いで、常識の範囲内と考えると良いのではないでしょうか。
ただ、教科書としての位置づけであるので、使い方についてはルールが決められると思われます


Q62  GPSは付けますか?
必要であればつけることは可能です。オプションとするのか標準とするのかはまだ定まっていま
せん。
ただ、盗難への対処や、この機会に児童の安全対策を合わせるとすると、あるとよいと思います


Q63  iPadをそのまま導入する可能性はありますか?
可能性は0ではありませんが、ハード、OSがクローズ環境なので他社との共通仕様化することが
困難な点がネックです。仕様が開かれているアンドロイドやリナックスを使うものが採用される
可能性が高いと思われます。
ただ、ユーザーインターフェースの点で、極めて優れているのでその技術に学ぶ必要がありそう
です。


Q64  コンピュータの苦手な子はどうするのですか?
使い勝手はコンピュータよりも携帯電話、ゲーム機に近いものになり苦手意識が生まれ難いもの
になって行きます。導入までに技術革新で、一層の操作性の向上が図られることと思います。そ
うすれば、実際にデバイスの操作面において、苦手意識を感じる子は殆どいなくなると考えてい
ます。


Q65  特別支援の児童はどうするのですか?
子どもの実態にあわせて、使用方法が研究されていくと思われます。また、
DAISY www.dinf.ne.jp/doc/daisy/
のように、特別支援に配慮した規格が採用されていくことが期待されています。
また、映像や音声などは、視覚や聴覚に訴えるため、集中力の乏しい児童も興味を持ちやすいと
も言えます。特別支援教育の視点からも、デジタル教科書は有効であると考えています。


Q66  政権が変わったらプランそのものが頓挫する可能性はありますか?
短期的には可能性はあります。しかし、長期的に見ると、世界の趨勢から教育のデジタル化が完
全に止まることはありません。遅くなるかどうかということです。そして、遅くするほど、日本
の教育はリスクを抱えることになると考えています。


Q67  個人情報は蓄積されるのですか?
個人情報は電子教科書デバイスと教室単位のバックアップデバイスに保存されます。学習履歴
を保存して利用するかどうかについては,時間をかけた慎重な対応と検討が必要になると思い
ます。個別の習熟度にあった教育を実現する為にも将来的には、蓄積と分析は必要であると思い
ます。


Q68  データの蓄積のメリットとデメリットは何ですか?
集約することで、先生方が子どもたちの進みぐあいを把握したり、集計したりできることで、評
価にも役立ちます。個別習熟度にあわせた指導をしやすくなる反面、個人情報の漏れの可能性が
発生する為セキュリティの配慮が必要になります。学習履歴の記録という非常にデリケートな個
人情報を誰が管理するのか,誰がアクセスできるのかということが
一番大きな問題になると思いますので,できるかぎり慎重に検討すべきべきだと思います。


Q69  アプリケーションはどんなものがあるのですか?
教科書の他に、「副読本」「副教材」「補助資料」の形で、デジタル化された様々なアプリケ
ーションが使われると思います。ドリル型の教材から、ゲーム性のあるもの、動画を中心とした
動く百科事典など、様々なアプリケーションの開発がなされてくると思います。


Q70  アプリの追加の権限は保護者もあるのですか?
デバイスの費用負担が保護者となれば自分の所有物ですからあることになります。しかし、教育
上の観点から制限がかかることも考えられます。


Q71  雨に濡れても壊れたり感電したりしませんか?
堅牢製、対防水性には充分配慮した端末となるはずです。完全防水になるかは分かりませんが、
通常の使い方では大丈夫なように設計されます。


Q72  電子黒板とはつながるのですか?
外部モニタ出力がついており、つながります。無線LANで接続して、意見を書き込んだりとい
う使い方も考えられます。
子供たちの意見を、デジタル教科書でリアルタイムに表示させることで、情報を共有しながら学
習を深める授業ができます。


Q73  進めている人はどんな人がいるのですか?
政治家では、原口一博前総務大臣が協力に推進しています。また、産業界ではソフトバンクの孫
正義さんが有名です。教育界では、慶応義塾大学の中村伊知哉先生や100マス計算などで有名
な陰山英男さん、「世の中科」で知られる藤原和博さんらが推進しています。
これらの有名な方々ばかりではなく、私のような一教員や一市民にも推進しようと努力している
人はたくさんいます。「みんなのデジタル教科書教育研究会」には、160名の人が集まり、そ
れぞれの立場で研究活動を進めています。


Q74  どんな人が反対していますか?
この質問は削除をしようかと考えています。


Q75  電子書籍ブームと関係あるのですか?
電子書籍の技術が発展したことによることが大きいと思われます。とくに、iPadはデジタル教科
書に夢とイメージを持たせる上で大きな役割を果たしました。電子書籍端末が多く普及し、多く
の人が電子書籍に慣れ親しむことで、デジタルで文字を読むことや学習をすることへの理解も深
まると思います。


Q76  画面のサイズはどのくらいになるのですか?
どのくらいの大きさがよいか、研究が進められると思われます。小中学校の教科書がそのまま読
めることを考えると7インチ以上になる見込みです。10inch ≒ A5サイズが適当との声もあり
ます。


Q77  2画面も検討されていますか?
操作方法や画面構成なども研究対象と考えられ、実際に検討もされています。一方で、折り曲げ
の機構は堅牢性で問題があるという意見も根強いです。ただ、任天堂のDSのように2画面でも
普及しているデジタル機器もありますので、引き続き、検討されていくと思われます。


Q78  スタイラスはあるのですか?
ペン型の入力装置であるスタイラスペンはおそらく標準機能になります。筆記が必要な場合もあ
るからです。


Q79  「ゲーム脳」になる心配はありませんか?
「ゲーム脳」とは、よく聞く表現ですが、実は科学的には認められていません。
ですので、「ゲーム脳」になる心配はありません。
ただ、過度に依存的になったり、あまりに長時間使用し続けたりしないかは検証する必要はあり
ます。
また、デジタル教科書のような電子デバイスを長期利用した場合のヒトの脳に対する影響は不明
です。
いずれにしても、過度に心配する必要はないと思います。


Q80  OSはなんですか?
iOSまたはAndoriod相当のレベルのモバイル端末用軽量OSになると思われます。現時点では、オ
ープン仕様であることからAndroidが有力と思われます。韓国では、リナックスも検討されている
ようです。


Q81  先生が自作した教材も使えるのですか?
従来のデジタル教材も数多くあるため、資産として使えるようになると思われます。。お互いに
出来の良い教材を共有・活用することで教材のレベルのアップが期待できます。


Q82  ネットいじめが起きる心配はありませんか?
絶対に起きない仕組み作りが必要です。
ネットワーク接続の制限をしたり、アクセスログを記録するなど防止するための技術的な対応を
図ります。
また、そのような対応がなされている事実を伝えるなど情報モラル指導を徹底して行い、完全に
防ぐことが必要です。


Q83  「脱獄」をされる可能性はありませんか?
セキュリティーホールを突くなどの方法で情報端末などのコンピュータに設けられた制限を取り外し、
製造者や管理者の意図しない方法でソフトウェアを起動できるような状態にすることを「脱獄」という
方もいようです。
そのようなことをするには、高いスキルが必要となります。しかし、そういうことをしようとする子も
出てくるかも知れません。その能力を上手く行かす方向にもっていきたいものです。
基本的にはそのようなことがおきないように万全の対策を考える必要があります。しかし、完全という
ことはいえません。


Q84  電子ペーパーですか液晶ディスプレイですか?
動画が見れる、インターフェース性能が高い点で液晶ディスプレイが有利で、目の疲労が少ない
、太陽光下でも見れる、電池寿命が桁違いに長い、割れない・軽い(プラスチック製が開発中)、等
の点で電子ペーパーが有利な為まだ結論は出ていません。今後の技術の進歩により、カラー電
子ぺーバーで動画ができればそれにこしたことはありませんが、そのためにはまだ開発に時間が
かかりそうです。しかし、目の健康面を考えると将来的にはそうなっていく可能性も高いです。


Q85  一回の充電でどれくらいもちますか?
液晶ディスプレイだと8時間程度、電子ペーパーなら2〜3週間程度です。液晶ディスプレイタイプ
でも、最低、1日の授業時間以上は持つものに改良される必要があります。


Q86  教科ごとにどのような使い方ができそうか例を示してください。
国語では、漢字練習が劇的に変わります。自分の苦手な漢字を中心に筆順を意識しながら練習が
できます。また、辞書と連動することで、類語の学習が容易にでき、語彙を飛躍的に増やすこと
が可能となると思われます。
算数では、習熟場面のドリル的な使用も有効ですが、とくに立体を切ってその断面を調べるなど
、現実では捉えにくいことについてシュミレーションすることが可能となることが大きいでし
ょう。
理科でも、シミュレーションや動画などを手もとで一緒に見ながら考えたりすることで、これま
での紙資料ではできなかったことが可能になります。
社会では、地図や統計資料との連動で、資料活用能力を高める授業構成がしやすくなるでしょう

体育では、例えば器械運動の理想のフォームの動画や、チェックポイントを見ることは、イメー
ジを持たせる上で大変有効に働きます。鉄棒の回り方のコツなども、動画で見た後、そのイメー
ジをもって練習に取り組む姿が想像できます。
図工では、コラージュの作成や音声と写真や絵を組み合わせた表現など、表現方法の広がりをも
たらすことが可能です。未来のクリエーターがさらにたくさん育つことでしょう。
家庭科では、ミシン糸のかけ方や玉結びの仕方の動画など、繰り返し見ながら行うことで、より
短時間でスキルを獲得できると考えられます。
これらは、ほんの一例で、デジタル教科書がもたらす授業変革の可能性は、非常に大きいものだ
といえるでしょう。


Q87  すべての教科書が一冊になるのですか?
はいそうです。一つの端末にすべての教科の教科書を納める方向で検討しています。さらに、副
読本や教材なども一緒に入ることになります。


Q88  盗まれる心配はありませんか?
あります。盗難防止、特に情報漏えいがない仕組みの構築が重要です。情報をパスワードで守る
ことはもちろんですが、盗難された場合にリモートである場所を特定したり、データを消去した
りする機能も必要です。また、個人情報そのものを端末には残さず、すべてクラウドで管理する
ということも今後検討されてくるでしょう。


Q89  教科書検定はクリアできますか?
法整備も含めて、これから研究されていくと思われます。


Q90  導入が進んでいる国と日本との違いはなんですか?
韓国では、指導者側のデジタル化が日本より進んでおり、「学習者用デジタル教科書」も早く導
入されます。すでに、15年に渡る下準備があったとのことで、念入りに準備されてここまでき
たようです。
一方、日本では、これまであまり準備されてきたというわけでなく、ここにきて急に話題に上っ
た感じは否めません。
その差は大きいと思います。しかし、挽回できない差ではありません。


Q91  紙の手触りが無くなるのは子どもに悪影響がありませんか?
感性を大切にすることは重要です。そして、もともと、子どもが触れる紙は教科書だけではあり
ません。
図書室の本がすべて電子書籍になることは、まず当分ないでしょう。
また、図工で紙に絵を描いたり、紙を切って工作をしたりということは、今後も無くなることは
ありません。
さらに、ノートについても、まず、当面無くならないでしょう。
そう考えると、子どもの身の回りから「紙の手触りが無くなる」という前提自体が間違えている
ことが分かります。


Q92  パラパラ漫画はできますか?
パラパラ漫画からすごいクオリティのクレイアニメーションまで可能です。
もっと面白い事も出来ます。子供の創意を刺激できる遊び機能も搭載され、子どもの想像力をパ
ラパラ漫画以上にかき立てる物となると思います。


Q93  導入までにどんな障害がありそうですか?
必要な予算・端末の開発・法整備などこれから考えられることは多いと思われます。
また、デジタル教科書導入に反対の考えをもつ人々の抵抗、仕様を争う企業間の争いなど沢山の
障壁が想像されます。
ただ、前途は多難でありますが、技術面を含めて乗り越えられない程のものではありません。子
どもたちの未来に必ず必要な物なので、すべてを乗り越え、実現ができます。その時期を少しで
も早めたいものです。


Q94  これからの手順はどうなると思いますか?
研究・検証を経て、予算化などの可能性が探られていくと思われます。政府の議論、DiTTなどの
民間企業の議論、現場(例えばデジ教研)の議論を融合していくことが今必要とされています。


Q95  国民の考えはどうやって反映されるのですか?
DiTTなどの研究協議会だけでなく、意見を集める場が作られていくのではないかと思われます。
この「100のQ&A」は、その時の羅針盤になることを想定して作成しました。


Q96  もう少し、ゆっくり導入を進めてもいいのではないですか?
想定が5〜10年後であり、十分な研究を経て、と考えられていると思われます。
しかし、既に諸外国には後れを取っており、日本の将来の為にも今がぎりぎりのタイミングです
。拙速は避けるべきですが、充分考慮しつつスピードを上げる必要があります。
一方で、多少外国に遅れをとって,国際競争力を失い,国民生活が窮乏し,いろいろと手遅れ
になってしまったとしても,性急にことを運ぶよりは,ゆっくり慎重にことを進めるほうがよい
場合もあると考える人もいます。
あなたは、どちらの考えに賛成でしょうか。


Q97  一人一台である必要がありますか?
全員が使う教科書という形で導入するからこそ、ICTに消極的な先生方でも使わなくてはなら
ない拘束力が生まれ、その結果、すべての教室で使われることになり、効果が上がります。もし
、学級に数台の教材用端末として導入された場合、使うクラスでは毎日使いますが、多くのクラ
スでは棚の中に眠らせておくということが容易に想定できます。
つまり、コストに見合った効果を挙げるためには一人1台保有する必要があり、複数人に1台では
、かけた費用に見合う効果が望めないといえます。


Q98  電子黒板があれば十分ではないですか?
電子黒板とデジタル教科書は、全く違うツールです。
電子黒板は提示ツールであり、子どもたちが手もとに持って使うことはできません。グループで
の共同学習、個々の習熟度にあわせた指導の為には一人1台のデジタル教科書が必要です。
電子黒板を見て学ぶ授業から、デジタル教科書を見て、操作して、情報を探し出すという、より
能動的な学習へ転換していくことが必要です。
もちろん、電子黒板にしても、デジタル教科書についても、それのみで学習が完結するわけでは
ありません。
たくさんの友達や先生とのコミュニケーションによって、知を獲得するプロセスは変わりません

今の授業プロセスに、さらに学びの手がかりが豊かに与えられることによって、厚みが加わると
考えてください。


Q99  学力が上がる証拠はありますか?
ICTを活用すると学習効果があることはすでに検証されています。
子どもたちが一人一台もつことにより、より学力が上がるかについては研究が進められていると
ころです。


Q100  指導要領の改訂にも影響しますか?
文部科学省で研究が計画されているわけですので、今後の研究結果によって、改訂についても反
映されていくと思われます。

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