教育現場発のデジタル教材についてのヒアリングまとめ

提供: みんなのデジタル教科書教育研究会

教育現場発のデジタル教材についてのヒアリングまとめです。
2013年1月から2月にかけて、デジ教研にて独自教材を作成・Web公開されている先生方を中心に、主に以下内容でヒアリングさせていただきました。

  • デジタル教科書・教材フォーマット標準化について
  • 現場発のアイデアによるデジタル教材開発と商用化について
  • その他

結論から言うと、現場発のデジタル教材を世に出し、ビジネスとして軌道に乗せることは非常に困難であろうという状況です。
いただいた意見を以下条件で記載します。

  • 発言者は匿名とする
  • 内容には私の所感が含まれている場合あり

今回ヒアリングさせていただいた方々は何故かほとんど算数・数学系の先生であり、他の教科では事情が異なる場合があると思いますのでご留意ください。
以下内容です。


(1) デジタル教科書・教材フォーマット標準化について
 ⇒タブレット等端末種の多様化に対応するためのデジタル教科書の
  フォーマット標準化について意見収集。
  ・独自の教材づくりで使っている実行環境と今後の標準化について
   意見交換。ネット上で一般に公開されているEPUB3サンプルコンテ
   ンツを紹介し、メディア表現力やインタラクティブ性を紹介。
   これはEPUB3でできることの紹介に留まっています。


(2) 現場発のアイデアによるデジタル教材開発と商用化について
 ⇒教育現場発のアイデアによる教材開発の可能性と、何が問題と
  なるかをヒアリング。
  ・教員の授業構成力の問題
  ⇒現場の先生には授業の構成能力にレベル差があり、それをカバーして
   利用者を広げる工夫が必要になる。
   多くの教員は教科書に準拠した指導案にそって授業を進めるため、
   流れにデジタル教材を取り入れられるのはある程度自分で授業
   組み立てができるスキルを持つ教員に限られてしまう。
   よって、教科書+デジタル教材の利用を前提とした指導案の作成が
   必要になるのではないか。
   ただし教科書への準拠を謳う時点で教科書会社に対する著作権の
   問題が発生したりクレームになる可能性が高く、大きなハードルである。
  ・人が作った独自デジタル教材は使いにくい
  ⇒教室には、極端な話教科書に準拠したデジタル教科書さえあればよい。
   デジタル教材が教科書と別にあってもやりたい授業のイメージに合わ
   なければ意味がないし、合うものを探すくらいならツールを使って
   そのデジタル教科書等をもとに自分で用意したほうが早い。
   そのためにはツールがとても現場に使いやすくできていることが
   とても重要。一度作った教材を後でまた直せることも重要。
   また、先生毎に考え方や授業デザインがあるので自分で作ったものは
   他の先生には中々使ってもらえない。
  ・デジタル教材の問題は評価選択の負荷
  ⇒教材として使える素材は、今までに販売されている書籍やYoutube等
   ネット上にあるものを含め、すでに大量に存在する。この状況で
   新しいコンテンツを作っても意味がない。
   コンテンツはすでに量が多すぎて、教員が自分の授業イメージに合う
   ものを探したり評価する余力がないため、評価のいいコンテンツを
   探すことを助ける仕組みがあった方が良い。
   しかし、北米など海外では教材コンテンツを集めてリスト化、評価や
   レビューでランク付けするサイトが運用されているものの、日本国内
   では同様の仕組みに取り組んでも長続きしないケースが多い。国内
   ではそういった情報やコンテンツに頼らずに授業を構成する教員が
   多いのかもしれない。


(3)その他
  ・授業でICTを活用するためには、コンテンツより授業手法、進め方を
   補助するツールが整備される方が現場で役に立つのではないか。
   特に物理的な処理が伴う作業。
   たとえば
   ⇒プリント配布、回収
   ⇒ノートチェック
   また、教材生成ツールのようなものがあるとよい。
   たとえば算数なら計算のパターンがテンプレートになっていて、式の
   かずを乱数等で自動生成してプリントを作るなど。
   ⇒ 1ソース、マルチアウトプット
  ・教員が授業で使うデジタル教材・コンテンツ等は、著作権を気にして
   はいるものの、実のところ是非を判断できないまま使用している。
   そういった教員が専門外のところをカバーできないか。


まとめ
結局、著作権法によるしがらみ、授業イメージの個性・教員スキル差異等による市場性の期待値の低さが問題となり、現場発のアイデアを使う教材開発は現実的でないというのが今の時点の状況です。
教材をまた作るよりも、授業進行を補助する支援ツール、オリジナル教材を簡単に作れるツールがあった方が有り難いという意見もありました。
ただし本件はデジ教研で興味を持っていただいた方、お会いできる範囲の方だけのヒアリングなのでサンプリング数が一桁の半分であり、意見召集としては実際まだまだ狭いので、この文の内容に関してデジ教研の皆様にご意見・感想を賜りたいと思います。
私は皆様のご意見を賜りつつ、次の展開を考えようと思っています。
よろしくお願いいたします。

(砂岡 克也)

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